教習項目7:車に働く自然の力と運転
車が働き続けようとする力と停止しようとする力
車の停止距離
停止距離=空走距離+制動距離
手ぇ臭ぇ
てぇ(し距離)=く(うそう距離)+せぇ(どう距離)
空走距離
危険を感じてからブレーキを踏み、ブレーキが実際に効き始めるまでの時間に走る距離。
速度との関係
速度に比例して長くなる。
速度が2倍…空走距離は約2倍
速度が4倍…空走距離は約4倍
空走距離が長くなる条件
運転者が疲れていると、危険を感じてから判断するまでの時間が長くなるため、空走距離(と停止距離)は長くなる(が、制動距離は変化しない)。
制動距離
ブレーキが効き始めてから、車が止まるまでの距離。
速度との関係
速度の2乗に比例して長くなる。
速度が2倍…制動距離は約4倍
速度が3倍…制動距離は約9倍
制動距離が長くなる条件
路面が雨に濡れていたり、タイヤがすり減ったりしている場合、乾燥した路面でタイヤがよい状態に比べると、制動距離は2倍以上になることもある。
重い荷物を積んでいると、制動距離は長くなる。
効果的な制動方法
十分手前でブレーキペダルを2、3回踏み、ブレーキランプを点滅させ、後続に停止の合図を送ってから、ブレーキペダルを軽く踏み、必要な分だけブレーキペダルを徐々に踏み込む。この方法は、追突を避けるために有効。
制動距離を最も短くする方法は、ハンドルをまっすぐにし、タイヤをロックさせないような強さで、ブレーキペダルを強く踏む。
ブレーキペダルを強く踏みすぎてタイヤがロックすると、制動距離が長くなり、ハンドルも効かず、横滑りが起きる。
荷物の積みかた等と車の安定性
重心が高いほど車は不安定になる(重心が低いほど安定する)ので、積み荷は高く積みすぎないようにする。
積み荷が左右均等でない場合も、重心が一方に片寄るため、車は不安定になる。
凹凸路では、振動で積み荷がずれたり、ロープがゆるんだりすることがあるので、ときどき点検する必要がある。
カーブ、坂道での運転
カーブ、曲がり角での運転
カーブや曲がり角では、遠心力が働く。
遠心力と速度の関係
速度の2乗に比例する。
速度が2倍…遠心力は約4倍
速度が3倍…遠心力は約9倍
遠心力が大きくなるその他の条件
カーブの半径が小さいほど、車の重量が重いほど、遠心力は大きくなる。
遠心力を考えたカーブの曲がりかた
カーブの(直前ではなく)手前で十分に速度を落とすことが重要。ブレーキをかけながら、ハンドルを切るのは危険。
坂道、山道での運転
上り坂での発進
四輪車の場合はハンドブレーキ、二輪車の場合は後輪ブレーキを使用し、車を後退させないようにする。
上り坂での停止
前の車が後退して衝突されるおそれがあるため、車間距離を十分にとる。
急な下り坂・長い下り坂
低いギアにチェンジして、エンジンブレーキを有効に活用する。
低いギアほどエンジンブレーキの制動力は大きい。フットブレーキはあくまで補助的に使用する。
フェード現象・ベーパーロック現象
フットブレーキや前後輪ブレーキに頼りすぎると、フェード現象やベーパー・ロック現象が起き、ブレーキが効かなくなることがある。
下り坂などで、フットブレーキや前後輪ブレーキを使い続けると、ブレーキやディスクが加熱し、摩擦力が急激に低下する。
その結果、ブレーキの効きが悪くなる。
ベーパー(vapor)とは蒸気のこと。下り坂などでフットブレーキや前後輪ブレーキを使い続けると、ブレーキパットやディスクなどが加熱し、その熱がブレーキ液に伝わり、ブレーキ内に気泡が発生する。
この状態では、気泡が圧力を吸収してしまい、ブレーキが効かなくなる。
坂道などでのゆずりあい
上り坂
坂道では、上り坂での発進の方が難しいため、下りの車が上りの車に道をゆずる。
ただし、上りの車でも近くに待避所などがあれば、その場所に入り、下りの車に道をゆずる。
谷や崖
転落のおそれがある谷や崖では、上り下りに関係なく、谷や崖側の車が道をゆずる。
坂道での駐車
- ハンドブレーキを確実にかける。
- MT車の場合、上り坂ではローギアに、下り坂ではバックギアに入れる。AT車ではどんな状況でもPに入れる。
- 輪止めをする。やむを得ないときは、石などでもOK。
二輪車の特性、乗車姿勢と走行のしかた
二輪車の特性
二輪車は、体で安定を保ちながら走り、停止すれば安定を失うという、四輪車とは異なる構造上の特性を持っている。
正しい乗車姿勢
MT車
足…ステップに土踏まずを乗せ、足の裏が地面と水平になるようにする。
ひざ…両ひざでタンクを軽く閉める。
手…手首を下げ、ハンドルを前に押し出すように、グリップを軽く握る。
肩・ひじ…肩の力を抜き、ひじをわずかに曲げる。
運転姿勢…背筋を伸ばし、視線は先の方へ向ける。前かがみは、視野が狭くなるので危険。
AT車
足…ステップボードから足先が外側に出ないように、足先をまっすぐ前に向ける。
ひざ…ひざが外側に開かないように、自然に曲げる。
手…手はグリップの中央を持ち、手首は少し角度を持たせる。
腕・ひじ…両腕の力を抜き、ひじにゆとりを持たせる。
運転姿勢…両肩と背筋の力を抜き、視線は前方へ向ける。前かがみは、視野が狭くなるので危険。
無断変速装置(CVT)の特性上、エンジン低回転時の動力伝達が弱いため、低速時のコントロールが難しく、エンジンブレーキが効きにくい。
急激なスロットル操作をすると、急発進するおそれがある。
二輪車の選び方
- 平地でセンタースタンドを立てることが楽にできる。
- 二輪車にまたがったとき、(片足ではなく)両足のつま先が地面にとどく。
- 8の字に押して歩くことができる。
- 体格に合ったものを選ぶようにする。
- 体力に自信があってもいきなり大型車に乗るのは危険。最初は小型の車種から始めたほうがよい。
走行のしかた
走行位置のとりかた
四輪車運転中に比べ、近くを見たり、道路の左前方を注視したりする傾向があり、全体的に視界が狭くなりがちになる。
意識して遠くを見るように心がける。
カーブ走行のしかた
カーブの直前ではなく、その手前の直線で速度を十分に落とす。
カーブの途中ではクラッチを切らない。車輪にエンジンの力が伝わっている方が安定する。
曲がるときは、ハンドルを切るのではなく、車体(体)を内側に傾け、自然に曲がるようにする。
道路の中央寄りを走行することは、対向車がはみ出してくることがあるため非常に危険。道路の右側にはみ出さないよう注意する。
曲がり角やカーブでは、追い越しをしてはいけない。
ブレーキ
ブレーキの種類
前輪ブレーキ…右手のブレーキレバー
後輪ブレーキ…右足のブレーキペダル(MT車)または、左手のブレーキレバー(AT車)
エンジンブレーキ…スロットルを戻す、またはシフトダウン(低速ギアに入れること)する
前にある方(ブレーキレバー)が前輪ブレーキ。後ろにある方(ブレーキペダル)が後輪ブレーキ。
ブレーキをかけるときの注意
ブレーキのかけかた
車体を垂直に保ち、ハンドルを切らない(まっすぐな)状態で、エンジンブレーキを効かせながら、前後輪のブレーキを同時にかける。
路面の状況への対応
乾燥した路面…前輪ブレーキを強めに
滑りやすい路面…後輪ブレーキを強めに
エンジンブレーキ
低速ギアになるほど制動力は大きいが、一気にシフトダウンすると危険。順序良くシフトダウンしていく。
急ブレーキの禁止
急ブレーキは横滑りの原因になるため、ブレーキは数回に分ける。
二人乗り
二人乗りの運転特性は、一人乗りのときとは違う。二人乗りは、一人乗りでの運転経験を積んでからにする。
重心
重心が増し、重心が後ろに移動し高くなるため、一人乗りのときよりも不安定になることがある。
加減速時
加減速時は、同乗者の動きがワンテンポ遅れる。
加速時…運転者を後ろに引く
減速時…運転者を前に押す。
同乗者と運転者の間隔
密着せずに適度な間隔をとって座る。
二人乗りの禁止
後部座席のないものや、原動機付自転車では、二人乗りをしてはいけない。
二人乗りが可能になる条件
一般道路…免許を受けていた期間が1年。
高速道路…21歳以上かつ、免許を受けていた期間が3年。
速度と衝撃力
衝撃力は、速度と重量に応じて大きくなる。
60km/hでコンクリートの壁に激突した場合は、約14メートルの高さ(ビルの5階)から落ちた場合と同程度の衝撃力を受ける。
運動エネルギー(衝撃力)は、速度の2乗に比例して大きくなる。
速度の2乗に比例して大きくなる。
速度が2倍なら4倍。速度が3倍なら約9倍。
逆に、速度が1/2になれば、約1/4になる。
交通公害の防止、地球温暖化の防止等
やさしい発進、加減速の少ない運転、アイドリングストップなどのエコドライブは、交通公害や地球温暖化防止につながる。
速度が速すぎても遅すぎても燃料は減りやすい。